「WiMAX」は、無線でインターネットが利用できるサービスです。
日本では2009年より「UQコミュニケーションズ」がサービスを開始し現在では契約数が3000万件を超えている人気のポケットWiFiです。
この記事では、ネットワークエンジニアのわたしがWiMAXが誕生した経緯や、WiMAXとWiFiの違い、実際にWiMAXを契約している立場からメリット、デメリットを紹介していきます。
WiMAXについて詳しく知りたい方はぜひご覧ください。
この記事の目次
WiMAXとは?
「WiMAX(ワイマックス)」は、高速な無線通信技術の1つで、スマホや携帯電話で利用される「4G LTE回線」などと同じように、家の中でも外でも使うことができるインターネット回線サービスです。
WiMAXを使ったサービスは世界各国で使われていますが、日本のWiMAXを使ったサービスは、KDDIグループの「UQコミュニケーションズ」が2009年よりサービスを開始しました。
UQコミュニケーションズは「UQモバイル」のCMでお馴染みの会社なので、知っている人も多いと思います
WiMAX(ワイマックス)は「Worldwide Interoperability for Microwave Access」の頭文字をとった略称です。
訳すと「マイクロ波を使った世界標準の無線アクセスシステム」といった意味になります。
簡単にいうと「色々な場所で使える無線通信」ということですね。
WiMAXに契約すると「モバイルWi-Fiルーター」と呼ばれる小型のルーターが送られてきます。
このルーターでインターネットに接続し、スマホやノートPC、タブレットなどの端末をWiFiでルーターに接続することで、どこでもインターネットが利用できるようになります。
インターネットへの接続はすべて無線で行われるので、光回線のようにケーブルなども一切必要なく、外でも利用できるという特徴を持っています。
WiMAXができた理由
先に話したとおり、WiMAXは「モバイルルーターを使った無線のインターネット回線」です。
ここからは、もう少し具体的にWiMAXについて解説していきます。
少し専門的な話になるので、興味のない人は飛ばしても構いません。
WiMAXは「IEEE(アイトリプルイー)」が定める通信技術規格の1つで「IEEE802.16」という番号が振られています。
IEEEは世界最大の電気、電子関係の技術者組織で「電子電気学会」と訳されることもある非営利組織です。
IT関連の技術は、IEEEの規格が標準化されることが多いです。
「無線LAN」などもIEEEが規格した結果、急激に普及していきました。
WiMAXはもともと、ADSLや光回線の代わりとなる無線固定回線として利用することを目的に作られました。
インターネットはいまやわたし達の生活に欠かせないインフラとなっていますが、地域によっては、光ケーブルなどの敷設(ふせつ)が難しい場合があります。
例えば、山間部で家屋が点在していている少数の世帯や、離島などがこのケースに当てはまります。
このような場所では光ケーブルの敷設にはコストがかかりすぎるし、メタル回線のADSLだと基地局との距離が遠すぎて通信速度が発揮できないなどの問題があります。
- 光回線:人が少ない場所では採算がとれない
- ADSL:基地局からの距離が遠くなると通信速度が遅くなる
そんな地域でも高速なインターネットが利用できるように生まれたのが「WiMAX」です。
WiMAXは基地局までは光ケーブルを敷設し、そこからエンドユーザーまでの「ラストワンマイル(2~10Km)」の距離は、無線を使って通信を行うことを目的としています。
現在のWiMAXはモバイルルーターを使ったポケットWiFiが主流となっていますが、元々は持ち運びできるモバイルWiFiではなく自宅で使うための固定回線として作られた回線です。
WiMAXには2種類ある
WiMAXはその後、自宅で使う固定回線だけではなく移動しながらも使うことのできる「モバイルWiMAX」が作られました。
これがわたし達が今、一般的に「WiMAX」と呼んでいるサービスになります。
「WiMAX」と「モバイルWiMAX」の違いは以下の表のようになります。
名称 | WiMAX | モバイルWiMAX |
規格 | 802.16-2004 | 802.16e-2005 |
周波数帯域 | 2~11GHz | 6GHz以下 |
セル半径 | 2~10km | 1~3km |
移動体 | 固定 | 120kmまでの移動体 |
WiMAXとモバイルWiMAXの大きな違いは、モバイルWiMAXは「120Kmまでの移動体であれば通信が行える」という点です。
従来のWiMAXは家の中に置いてあるルーターにしか利用できませんでしたが、モバイルWiMAXは移動しながらでも通信ができるように進化しました。
おかげでルーターを持っていけば、家の中だけでなく外でも高速通信が行えるようになり、利便性が格段に向上しました。
UQコミュニケーションズが提供している「WiMAX」は、この「モバイルWiMAX」の技術を利用したポケットWiFiです。
一般的には「モバイルWiMAX」のことを「WiMAX」と呼んでいますが、厳密には両者は別ものです。
あまり気にする必要はないかもしれませんが、IT関係の方やエンジニアの方は知っておいたほうがいいです。
WiMAXとWiFiの違い
「WiMAX」と同じ無線を使った通信に「WiFi」があります。
「WiFiスポット」など、WiFiはよく耳にする言葉ですが、WiMAXと何が違うのでしょうか。
「WiFi(ワイファイ)」は近くにあるスマホやタブレット、PC、ゲーム機、プリンターなどを無線でつなぐ通信技術です。
無線LANの規格では「IEEE802.11」という番号が振られています。
- モバイルWiMAX:802.16e-2005
- WiFi:IEEE802.11
家電量販店などで無線LANルーターのパッケージをみると「802.11ac対応」などと書いてあると思います。
これはWiFiの通信規格を表していて、末尾に付くアルファベットがWiFiのバージョンを表しています。
「無線LAN」という言葉もありますが、無線LANとWiFiは同じ意味で使われることが多いです。
WiFiは無線LANの規格の1つなので、厳密には違うものですが、ほとんどの場合「無線LAN=WiFi」のことだと考えても大丈夫です。
無線LANの「LAN」は「Local Area Network(ローカルエリアネットワーク)」の略で、同じ建物や会社などの狭い範囲で接続できるネットワークのことです。
家の中だと「家庭内LAN」、会社の中だと「社内LAN」などと呼ばれます。
対してWiMAXは、ADSLや光回線のようにインターネットに接続するサービスです。
そのため「LAN」ではなく「WAN」と呼ばれています。
「WAN」は「Wide Area Network(ワイドエリアネットワーク)」の略で、LANよりも遠く離れた場所をつなぐためのネットワークのことです。
インターネットも「WAN」の一つです。
WiMAXとWiFiの違いは、WiMAXは、ADSLや光回線、携帯電話回線と同じようにルータの外側(WAN)の通信、WiFiは、近くの機器同士をつなぐルーターの内側(LAN)の通信だと考えるいいでしょう。
WiMAXとWiFiの違い
- WiMAX:インターネットと接続する無線通信
- Wi-Fi:LAN内の機器(スマホやPC、タブレット)と接続する無線通信
WiMAXの7つのメリット
WiMAXには様々なメリットがあります。
ここでは、WiMAXが他社の回線に比べて優位な点を紹介します。
- 持ち運びできてどこでも使える
- 容量制限なしで無制限に利用できる
- 工事不要ですぐに使える
- 配線不要で複数の端末で使える
- 高速通信で快適に利用できる
- ネット回線を1本化して通信料金を節約できる
- auユーザーは最大月額1000円割引になる
持ち運びできてどこでも使える
WiMAXのルーターは「モバイルWi-Fiルーター」と呼ばれる小型のルーターです。
スマホより少し小さいくらいのサイズなので、持ち運びが簡単です。
ポケットやバッグに入れて持ち運べば、家の中だけでなく外でもWiMAXでインターネットを楽しむことができます。
固定回線と違い、持ち運びして家の外で使うことができるので、スマホの通信回線の代わりに使うことができます。
WiMAXには、据え置き型のホームルーターもあります。
家の外ではあまりインターネットを利用しない人はそちらを選択することもできます。
容量制限なし!無制限に利用できる
WiMAXの「ギガ放題プラン」を利用すれば、月間データ使用量が制限無しで使い放題になります。
WiMAX以外の携帯電話回線を使ったポケットWifiは「月7Gを超えると翌月まで速度制限」というように、決められたデータ使用量を超えると128Kbpsに速度制限されてしまうことが多いです。
速度制限になると通信速度が非常に遅くなり、インターネットを開くのにもかなりの時間がかかりますから、とてもイライラしてストレスがたまります。
WiMAX以外のポケットWiFiで無制限で利用できるプランはほとんどありませんし、あったとしても月額料金が高く割高になりがちです。
WiMAXならデータ使用量を気にせずに快適にインターネットを楽しむことが可能です。
工事不要ですぐに使うことができる
WiMAXは工事不要でルーターが届いた日からすぐにインターネットを使えるようになります。
光回線などの固定回線の場合、有線なのでケーブルを敷設するために宅内での工事が必要になります。
工事業者との日程調整なども必要になるので、契約してもすぐに利用することはできず1ヶ月以上時間がかかる場合もあります。
WiMAXは固定回線を敷設するのが難しい山間部や離島、少数の世帯が点在している地域などで利用するために生まれた無線技術です。
ですから宅内の工事が不要ですぐに使えるようになっています。
WiMAXならルーターの電源をいれて、PCやスマホでWiFiにつなげばすぐにインターネットが使えるようになります。
工事不要で壁に穴を開ける必要もありませんから戸建て以外のマンションや寮などでも手軽に使うことができます。
配線不要で、たくさんの端末に接続できる
WiMAXはワイヤレスなので配線不要で同時に複数の端末でインターネットを利用することができます。
有線だと、複数の端末を接続するにはLANケーブルを使って1台1台に接続する必要があります。
接続する端末が多いと、その分LANケーブルが増えるので、配線がごちゃごちゃしてしまいます。
新しい端末が増える度にLANケーブルが新しく必要になるので、その分コストもかかります。
WiMAXならワイヤレスで、スマホ、タブレット、ノートパソコン、ゲーム機などに最大40台の端末を同時に接続することができます。
LANケーブルが必要ないので、配線の取り回しを考えたりする必要もなく、見た目もスッキリします。
高速通信で快適に利用できる
「WiMAX2+」は、下り最大558Mbpsの高速通信が可能です。
これはスマホや携帯で利用できる4G LTEよりも高速です。
ブラウザの読み込みも早く、ストレスなく快適にインターネットを楽しむことができます。
昔は無線通信は有線に比べると通信速度が速くなかったので、便利ですが一種「補助的な役割」として利用されていました。
そのイメージから「無線は遅い」というイメージを持っている人も多いかも知れません。
しかし現在は通信速度が大幅にアップしているので、十分メインのインターネット回線として利用することが可能です。
一昔前の光回線は最大100Mbpsだったことを考えると、無線で558Mbpsの速度は十分なスピードです。
さらに最新機種の「W06」は、auの4G LTE回線と組み合わせることで、下り最大1,237Mbpsの高速通信が可能です。
「4×4 MIMO」、「256QAM」、「キャリアアグリゲーション」という最新の通信技術を利用することで高速化を実現しています。
現在は東京、名古屋、大阪の一部のエリアでしか対応していませんが、今後、エリアを拡充していくと考えられます。
WiMAXの通信は、今後もどんどん高速化が進んでいくので期待大ですね。
ネット回線を1本化して通信料金を節約できる
WiMAXは無線にもかかわらず最大1,237Mbpsと通信速度が非常に高速なので、固定回線のかわりとして十分使うことができます。
また家の外にも持ち運びできるので固定回線とスマホの通信をWiMAXに1本化することが可能です。
いままでスマホの多めのデータプランと固定回線を契約していた人は、スマホのデータプランを一番安いプランに変更して固定回線を解約してしまえば、通信料金を大幅に節約することができます。
iPadなどのタブレットを携帯電話回線で利用している人は、さらに通信料金を節約できるでしょう。
WiMAXに切り替えることで、今まで月1万円以上かかっていた通信費を5000円以上安くすることも可能です。
実際にわたしも自宅では固定回線を使わずにインターネット回線はすべてWiMAX1本で利用しています。
主にスマホ、タブレット、PCを使っていますが、WiMAXのおかげで毎月の通信料金をかなり節約できています。
通信料金を安くしたいと考えている人は、WiMAXを利用するといいですよ。
特に一人暮らしの方であれば、ポケットWiFi1つあれば、どこでもインターネットが使えるので非常に便利です。
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auユーザーはスマホが最大1000円割引になる
auスマホを利用している人がWiMAXを契約するとスマホの月額料金が割引になる「スマートバリューmine」が適応されます。
WiMAXを提供している「UQコミュニケーションズ」がKDDIグループなので、auユーザーにはセット割引があります。
セット割の対象となるWiMAXのプランは「UQ Flatツープラス ギガ放題(2年/3年)」と「UQ Flatツープラス(2年/3年/4年)」になります。
WiMAXのルーターが到着後、auのカスタマーセンターに連絡して「auスマートバリューmine」に加入すると、翌月からauスマホのプランに応じ、最大月額1000円割引になります。
割引が適応されるのは、WiMAX1台につき、スマホ1台となります。
その点は、通常のスマートバリューとは違っています。
WiMAXは価格が安いのが魅力ですが、スマホのセット割を利用すればさらに安く利用できます。
割引特典があるので、auユーザーの方におすすめです。
WiMAXの3つのデメリット
WiMAXのメリットを紹介しました。
次にWiMAXを使う前に知っておきたいデメリットも紹介します。
- 3日間10G以上の利用で速度制限がある
- 電波が障害物に弱い
- 光回線のほうが通信速度が早い
3日間10Gを超えると速度制限にかかる
WiMAXはギガ放題プランを利用すると月間データ通信量は無制限で利用できるようになりますが、「3日間でデータ通信量が10Gを超える」と一時的に速度制限がかかります。
WiMAXの速度制限の内容
- 速度制限がかかる通信量:3日で10G以上
- 速度制限の期間:データ通信量が10Gを超えた翌日の18時~翌2時まで
- 速度制限後の通信速度:最大1Mbps
速度制限はありますが、他社回線と比べて制限内容はかなり緩めで、通信速度は「1Mbps」、制限する時間は「翌日の混雑する時間帯のみ」となっています。
他社のポケットWiFiだと翌月まで128Kbpsに速度制限というサービスが多いので、比較するとやさしいですね。
速度制限にかかっても1Mbps程度の通信速度は出るので、Youtubeの標準画質動画などは問題なく見ることができます。
わたしもWiMAXで速度制限にかかったことがありますが、あまり気にせずにそのまま使っていたので、ほとんど影響はありませんでした。
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3日間で10Gということは、ギリギリまで利用した場合、1ヶ月で100G程度利用できます。
高画質動画を長時間視聴しないなら月100Gに到達することはありません。
WiMAXは短期間の速度制限はありますが一般的な使い方をする人ならあまり気にする必要はないでしょう。
WiMAXの速度制限については「WiMAXは速度制限なしで使える?解除の方法は?」でも詳しく紹介しているのでよかったらご覧ください。
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電波が障害物に弱い
WiMAXは基地局から電波を飛ばしていますが、基地局とルーターの間にビルや山などの障害物があると電波が届きにくくなります。
これは、電波は周波数帯が高くなるほど通信速度が早くなりますが、その分障害物によって電波が減衰しやすいという特徴があるためです。
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WiMAXは2.5GHzの周波数帯を利用しているので、2GHzを利用しているLTEに比べると通信速度は高速ですが、障害物に弱くなります。
WiMAXのエリア内であっても、基地局とルーターの位置の関係で場所によっては電波が入りにくいことがあります。
基地局とルーターの間に障害物があると電波が弱くなるので、建物の構造によっては、室内も電波が入りにくくなります。
地下鉄や地下のお店なども電波が入らないことがありますね。
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WiMAXの電波が入らないところでも、auの4G LTEが利用できる「ハイスピードプラスエリアモード」は利用できます。
通信速度は落ちますが、WiMAXの障害物に弱いデメリットを解消することができます。
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光回線のほうが通信が高速で安定する
WiMAXの通信速度は最大で1,237Mbpsですが、光回線は最大10GMbpsです。
光回線のほうが料金は高くなりますが、通信速度は上になります。
またWiMAXは様々な対策がされているとはいえ、無線という特性上どうしても電波の干渉を受けてしまいます。
そのためシールドでケーブルが保護されている有線に比べると通信速度はやや不安定になります。
普通にインターネットを使う分には問題ありませんが、通信速度が明暗を分けるFPSなどネットゲームのヘビーユーザーは、光回線のほうがおすすめです。
またゆるい制限とはいえ、WiMAXには3日間で10G以上利用すると1Mbpsになる速度制限があります。
4Kなどの高画質な動画を長時間観る人は、すぐに速度制限にかかってしまうのでWiMAXより光回線の方がいいでしょう。
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WiMAXのまとめ
WiMAXは、無線でインターネットに接続することができるサービスです。
持ち運びできる上、月額料金も安く通信速度も高速です。
通信制限も他社に比べるとゆるく非常に使い勝手がよいサービスになっています。
外で使う以外にも、家の中で固定回線の代わりとしても利用することができるので、通信費の節約にも役立ちます。
WiMAXはメリットの多いサービスなので、無線のインターネット回線を探している方はにおすすめです。
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